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halのブックレビュー
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IMG_9094.JPGわが家でつくるこだわり麹
永田十蔵   農文協







著者の生家は、福岡で3代続く麹屋「永田十蔵商店」であったが、
時代の流れとともにやむなく廃業。
それでも、麹屋の心意気だけは忘れず、研究を続けてきた人です。
日本の食文化の基本的調味料である、味噌、醤油、味醂、酢、酒などは、
麹なくしては産まれません。
日本の食文化は、麹のうえに成り立っているといっても過言ではないでしょう。

  ~感動的な芸術作品は、作家の精魂を込めた手作業のなかから生まれるものです。
   手づくりこそが芸術たりえるのです。~
   私は、手づくりこそが、芸術作品と同様、おいしくて感動的でさらに「正しい食」を
   手に入れることができる方法だと確信しています。~
   (著者のことば)

発酵食品を手作りする人はいても、麹は麹屋さんから買ってくるのがふつう。
この本は、その麹づくりから自分でやってみようという、自家製麹の作り方の本。
かなりマニアックです。

麦麹から、麦ドブロク。麦芽で糖化を行なうビールに対して、
麹で糖化を行なうさらっとした和風ビール。
小麦粉を麹にしてつくったお酒は、真性マッカリ。韓国のドブロクです。
黒麹でつくれば、泡盛、その蒸留後のもろみを絞れば、黒酢になります。
醤油も味噌も、ありとあらゆる発酵食品づくりを楽しみ、味わいの世界が広がります。
それにしても、麹の力ってすごい。
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IMG_0940.jpg幼年  福永武彦
福永武彦全小説 第7巻

福永武彦の小説で、
読もうと思っていた最後の小説です。




福永武彦 ランキング発表
1位   草の花
2位   忘却の河
3位   死の島
4位   海市
5位   愛の試み
6位   告別・廃市・幼年

大作という意味では、死の島が1位なのかもしれませんが、
やはり、
草の花、忘却の河なくしては、福永武彦は語れません。
草の花、忘却の河、どちらを1位にするか非常に迷いましたが、
まだ青いかおりのする「草の花」を堂々1位にしました。
あえて4位にした海市も、大好きな小説です。
愛の試みも洒落ています。
それにしても死の島は、
村上春樹の1Q84に影響をあたえているような気がするのは、
私だけでしょうか?

私のなかの福永武彦のイメージは、
ダンディでお洒落で知的なかおりのする、ちょいわるおじさまです。
IMG_9095.JPG僕は日本でたったひとりのチベット医になった
小川 康 (おがわやすし)
径書房 (こみちしょぼう)

チベット医学とは、チベット仏教に根ざした精神医学であり、8世紀に医聖ユトクが、
チベットの伝承医学に、中国医学、インド伝統医学(アーユルヴェーダ)、
イスラム伝統医学(ユナニ医学)のエッセンスを加えて完成させたといわれています。
チベット医学の教典は、「四部医典」。
4つの部門から成り立ち、メンツィカン(チベット医学暦法学研究所)を卒業するとき
秘訣部を除くすべてを3~5時間かけて暗誦する試験、ギュースムが行われます。
著者は、インド北部ダラムサラにあるメンツィカンにチベット圏以外の外国人として
はじめて合格し、困難を乗り越え無事卒業、チベット医・アムチとして認められた人です。
 
インド・ダラムサラには、1959年ダライラマ14世が亡命し、チベット亡命政府があります。
メンチィカンでの学生生活は、莫大な量の教典の暗誦、
標高4000メートルを超えるヒマラヤ山中での命がけの薬草採取、
1年に1日だけ、満月の光のもとでしか作ることのできない神秘の薬、月晶丸作りの実習など、
他には類を見ない授業が待ち受けていました。

チベット医は大自然とむきあい、五感を働かせて診察する。
患者のために命がけで薬草を採取し、
患者の声に耳をかたむける。
そこには医学の原点があります。

そして著者自身、薬草採取の時、背中に大きなリュックを背負い急流を渡りながら、
だめだ、落ちる!と思った瞬間、
なにかに守られている、と感じたのは1度や2度ではないと語っています。
チベットに渡る5年も前のこと、
勤めていた会社の上司に、
「初めて出会ったその瞬間、チベットの古い僧院が眼前に拡がり、
目眩がして倒れそうな衝撃をうけた。
僕と君は、前世のどこかで、一緒にチベットの僧院にいた。」
と告白されています。

著者の笑いと涙のダラムサラでの青春とチベット医学。
そこには学問だけでは手に入れることの出来ない、
太古の昔から、人間が大自然とともに生きてきた
不思議な神秘の力を感じます。

チベットに興味のある人もない人も、
とても面白い本です。
☆☆☆☆☆
お勧めです。
芥川賞受賞作が文藝春秋3月号に掲載されました。
おじいちゃんが毎月購読しているので、貸してもらいました。
IMG_9092.JPG共喰い   田中慎弥
川が海に注ぐ河口の田舎街、川辺(かわべ)。
かわべのよどんだ空気とにおい。
その情景がありありと浮かびます。
読み始めたら、いっきに読めます。
ただ、性的暴力をあつかっているので、
個人的には、好きになれない小説です。


 
IMG_1006.jpgIMG_1375.jpg人間の條件 上中下 
五味川純平







昨年の夏から読み始めたものの、
上は引き込まれるように読み終えましたが、
中で少し中だるみ、
下に至っては、話がなかなか進展しないので、読むのにとても時間がかかりました。
図書館で借りては返し、借りては返しの繰り返し。
それでもなぜか、この本は最後まで読みたいという使命感に駆られ、
上中下で延べ半年間も借りてしまいました。
その間、図書館の係員さんは文句ひとつ言わず、ありがとうございました。
ついに今日、最後のページを読破しました。
予期せぬ結末に、あっと息をのんでしまった。
梶と美千子が再会する一縷の望みは・・・。
孤高のセンチメンタルヒューマニスト 梶。
その屈強な精神と正義感をもって、
戦争という極限の状態において、自分の信念を貫こうとした梶。
戦争は、救いようもないほどに人間をうちのめしていまう。
正義感が強ければ強いほど、その傷は計り知れない。
昭和のベストセラーで、映画やドラマ化もされ一世を風靡した小説ですが、
今となっては誰も読む人がいない、図書館の書庫に眠る本です。
ちなみに映画は母がまだ産まれる前、全6部作という超大作で、
梶役は、仲代達矢。
ドラマでは、加藤剛だったそうです。
イメージにぴったりですね。
人間の條件を読んでいたら、
おばあちゃんに、懐かしい本読んでるね、なんて言われたくらいですから。
映画やドラマも気になりますが、映像で見るにはかなり重い内容なので、
ためらいます。
戦争とは?
人間の生き方とは?
平和な時代に生まれ育ち、反戦の本当の意味を知らない世代にとっては、
戦争の不条理さを身に染みて感じることのできる小説です。
一度、手にとってみて下さい。

IMG_1194.jpgもやしもん  1~3巻 石川雅之
ジャッキーおおすすめのマンガ第2弾です。
農大を舞台に繰り広げられる青春物語。
いつきゼミに集まる、個性豊かなキャラクターたち。
世界の興味深い発酵食品が次々と出てきます。



キビヤック イヌイットの発酵食品。
        アザラシの内臓と肉をくりぬき、その中に海鳥をつめ地中に埋めて発酵させる。
        食べるときはその海鳥のしっぽから、内臓をすすって食べる。
ホンオフェ  韓国のエイの発酵食品。 
        世界で2番目にくさい発酵食品と言われている。
シュールストレミング  スウェーデンのニシンの発酵食品。
               世界一臭い缶詰と言われている。
               缶詰の中でも発酵し続けている。
               食べるタイミングを見極めること。
いまや、発酵食品大ブーム。
でも、これらを食すには、かなりの勇気がいりそうですね。
主人公のもやしもんは、菌を目で識別できる不思議な力を持ってます。
我が家の塩こうじの発酵具合を確かめてもらいたいな。
聖☆おにいさん   中村光  1~5巻
IMG_1159.jpgジャッキーおすすめのマンガ第1弾。
下界に降りてきたイエスとブッダのお話。
自虐的なイエスと、
お坊ちゃま育ちのブッダが繰り広げる、
ほのぼの下宿生活。
宗教的な知識があると、より楽しめます。



ちょっと知的なギャクマンガ。
こんなマンガが売れるのも、世相を反映してるんでしょうか?
母は、イエスよりもブッダが好き。
このマンガが面白かったので、
映画  リトルブッダもレンタルで見ました。
現代のストーリーと、シッダールタの一生がオーバーラップして、
同時進行で描かれてます。
キアヌリーブス演じるシッダールタは見ものですよ。
釈迦の伝記としても楽しめるし、
仏教の輪廻の思想、精神と肉体とはなにか?
という哲学的な疑問にも答えてくれる興味深い映画です。
チベットの高僧の言葉ひとつひとつが、叡智にあふれています。


IMG_1008.jpg告別  福永武彦
福永武彦全小説  第6巻

告別は、福永武彦の多くの作品が絶版になっているなか、
文庫に残っている作品なので読んでみました。



他の作品と比べてランキングの上位に入る小説ではありませんが、
福永武彦ファンとしては、はずせません。
この小説もまた、愛のない夫婦生活と、愛人との間で揺れ動く中年男が書かれています。
そして大学生の娘夏子が、父親の裏切りを許すことができず自ら死を選んでしまう。
上條の煮え切らない、優柔不断さには、あきれてしまった。
福永の他の小説の主人公のように魅力的でもないので、少し物足りなさを感じました。
夏子が若さゆえの潔癖さと純粋さで、父親をやりこめるシーンはあっぱれだったのですが、
自殺してしまうのがとても残念。
なにも自殺まですることはなかったのに。

次は、「幼年」を読んでみたいと思います。
福永武彦全小説の附録の月報で、東山魁夷と三浦哲郎が「幼年」を絶賛していたからです。
これで一通り、福永武彦先生の読みたかった小説を読破することになります。
次回は、福永武彦の小説ランキングをしてみたいと思います。
お楽しみに。


海市   福永武彦  
福永武彦全小説 第8巻
IMG_1007.jpg序のなかで、「海市」という題名は、
蘇軾の詩、「海市」から踏襲した。
  「心知所見皆幻影」
  (まことに知る見るところみな幻影なるを)
そして旧作の「廃市」と対になるのが面白いと思っていた。
と書かれています。



「海市」 すごくおもしろかったです。
ひきこまれました。
もう恋愛は小説の中だけにしておこうと思ってしまったほど。
こんな恋愛ができたら素敵。まるでドラマや映画を見ているような小説でした。
大人の恋愛小説です。
官能的。それでいて品があるのは、さすが福永武彦先生ならではです。
そして、「忘却の河」や「廃市」のように暗さが前面に出ていないところもまたいい。
お洒落な恋愛小説としてもさらりと読めますが、
小説の根底にはやはり、福永先生の永遠のテーマ、愛と死があります。
さまざま人間模様と、そこに流れる音楽。
薄っぺらな恋愛小説に終わらないところが、福永文学に惹かれる所以です。
40歳になる画家 澁太吉(しぶたきち)が南伊豆の旅先で
偶然出会った女性、安見子(やすみこ)と恋におちる。
彼は妻と子があり、そして彼女もまた夫がいる。
そして彼女の夫は、実は澁の親友であったという偶然。
南伊豆の左浦(さうら)、友江、落人(おちうど)の美しい情景。
東京の郊外にあるつつじのある古い寺。
そこで、江戸時代からある富士山をかたどった散策路を歩く2人。
東京からタクシーで1時間の、海の見えるホテル。
ホテルの窓から港を眺めながらの夕暮れ。
黄昏は雀色時(すずめいろどき)という。
ブラームスとモツァルトのクラリネット五重奏曲の夕べ。
上野駅から急行列車に乗って、軽井沢のホテルでの逢引。
若かったら、こんな洒落たデートをさらりとはできないだろうな。

小説の冒頭で主人公の澁が言う言葉。
40歳という若いようでもあれば老いたようでもある中途半端な年齢にいる人間は、
この人生をどういうふうに受け入れればいいのか、まだ正確な見当がついてないと言える。
諦めるには若いし、しゃにむに突進するには餘分な分別はあっても青年の血気はない。

その澁が、狂おしいほどの恋におちてしまうお話。
そして安見子がとても魅力的なのです。
今は絶版になっているのがおしいほどの小説です。

序の中で作者は南伊豆に旅行し、妻良(めら)、子浦、落居などに滞在して、
妻良の宿でせっせとノオトを取ったと書かれています。
ちょうど大作、「死の島」の執筆中に、それを棚に上げて書かれた新作です。
いつかこの海市に出てくる風景を旅してみたいです。
IMG_1008.jpg廃市  福永武彦 
福永武彦全小説  第6巻 新潮社






廃市という題名について、福永先生はあとがきで、
「北原白秋の「おもひで」序文からこの言葉を借りて来たが、白秋がその郷里柳河を廃市と
呼んだのに対して、僕の作品の舞台はまったく架空の場所である。」
と書いています。
  非生産的な歴史の中に取り残されてしまったような小さな町
  滅びつつある、頽廃的なまち
もう3年前になりますが、柳川の町を旅したことがあります。
今では観光化され、頽廃的という言葉とは無縁ののどかな町でした。
またいつか廃市の雰囲気を味わいながら、柳川の町を歩いてみたくなりました。

IMG_1008.jpg愛の試み   福永武彦  
福永武彦全小説 第4巻  新潮社
福永武彦先生の愛の哲学です。
エッセイの合間に、
愛の短編小説がおりこまれているという
面白い構成です。



福永先生があとがきでこの短編小説について、
「章と章との間に、ところどころ、一種の挿絵がわりに収められた短い小説。」と書いています。
エッセイにくたびれたら、息抜きをしていただきたいという、福永先生の粋なはからいです。
そして、
昭和44年に書かれたあとがきには、
「今日のように愛を伴わない性が氾濫している世の中に、こういう本を読もうとする真面目な
読者諸氏がいることを、僕は私情を離れて嬉しく思う。」
と書かれています。
昭和44年で、すでにそんな時代だったとは考えられませんが、
今の世の中を見たら、福永先生はどう思われるでしょうか?
IMG_0954.jpg死の島 上・下 福永武彦
福永武彦全小説 第10巻 第11巻 新潮社

福永武彦先生の大ファンになり、3作目に読んだのは死の島。
こんなにはまった小説家は、今までになかったかも。



死の島は、草の花、忘却の河とは一線を異にする難解な長編小説です。
最初にこの本を読んでいたら、福永武彦をこんなに好きになっていなかったかも。
福永武彦の小説を理解するには、読む順番も大切です。
この本を3冊めに選んだことはラッキーでした。
死の島は、難解な小説ですが文章は読みやすく、
長編でも一気に読ませるところ、さすがは福永先生です。
現在と過去、現実と主人公相馬が書く小説と夢の世界が交互に入り乱れ、
読んでいるうちに、いったいどちらが現実でどちらが相馬の書く小説なのか
わからなくなっていくという、実験的で前衛的な小説です。
根底に流れるのは、福永武彦の永遠のテーマ、愛と生と死。
そして死の島では、今まで読んだ福永武彦の小説にはなかった
広島の原爆の被害者を描くという社会的問題を重要なテーマとしています。
原爆によって死の恐怖にとりつかれ、
もう二度と生きる意味を見い出すことができない萌木素子。
その恐怖は、どんな愛によっても救われない。
シノシマ  ヒロシマ
福永武彦の小説は絶版になっているものが多く、この死の島もそのひとつです。
原爆問題が風化していく現代において、
そして福島の原発が社会的な恐怖になっている今、
この小説はもう一度多くの人々の目にふれて、読んでほしい小説だと思いました。
漫画「はだしのげん」を読んだ読後感とはまた違った意味で、原爆の恐ろしさを実感します。
IMG_0940.jpg忘却の河  福永武彦
福永武彦全小説第7巻 新潮社

「草の花」を読んで感銘を受け、
福永武彦2冊目を手にとりました。
「忘却の河」です。



「忘却の河」を読んで、完全に福永武彦のとりこになってしまいました。
この本もまた、読後何度もページを繰り、読み返しました。
生と死、そして愛するということ。
福永武彦の永遠のテーマを、ある1つの家族を題材にして語っています。
同じ家族でありながら、それぞれに孤独と秘密をかかえ生きている父、母、そして2人の娘達。
 
日本海の海辺の寂しくて貧しい村
東北の田舎の貧しい村
掘割のどぶの水の臭いのする都会の貧しいアパートの一室

悲しい情景の数々、そして登場人物の心の告白が静かにそして熱く胸にせまる物語。

彼はその時若かったし、私は今や老いた。
人生の経験が私に教えたものは何だったろう。
私はその女を抱き、
今は悔恨もなく自責もなく、そして燃え上がるような官能の悦びもなく、
ただこの行為が一切の忘却につながるが故にこの女を愛していた。

理想とか主義とかはとうの昔に殺してしまった。
悔恨が襲うことがあっても私はそれを意志で押し殺すことを覚えた。

賽の河原
あまりにも悲しくてせつない場所。
実際に通称賽の河原と呼ばれる場所は、日本にも何箇所かあるそうです。
たとえば、青森県の恐山もその1つです。
作者は賽の河原はあとがきで、まったくの空想であると書いていますが、
日本海の海辺の片田舎に、本当にこんな場所があったんだろうと
小説のなかの風景を実在の場所と重ねあわせていました。
以前旅した石川県の曽々木海岸あたりは、
昔はこんな場所だったのではと思わせる風景が広がっていました。
能登には、湖月館という福永武彦ゆかりの宿があるそうです。
福永ファンとしては、ぜひ泊まってみたい宿の1つです。

去年の秋から水滸伝を読みはじめたものの、最近は中だるみ状態。
11巻まで読破しましたが、完結編の19巻までにはまだ遠い。
最初は面白くて夢中で読みましたが、中盤戦にいたっては同じことの繰り返しばかり。
志を語る同士も、次第に陳腐なものに見えてきた。
登場人物も多く話が長すぎるため、主要人物以外はこの人ってどんな人だったかな、
どこに出てきたかな、とその人となりも忘れてしまっています。
水滸伝は娯楽小説としてぼちぼち最後まで読むことにして。
福永武彦、夏目漱石、水滸伝を同時進行で読み進めることにしました。
三つ巴の読書です。
それぞれジャンルも違って
この3冊のブレンドはとてもいい感じです。
久しぶりに読書が楽しい。
IMG_0930.jpg三四郎  夏目漱石
明治の文豪と呼ばれる漱石。
しかし、この歳になるまでほとんど読んだことがなかった。
読んだのは、「坊っちゃん」と、高校の国語の教科書に
載っていた「こころ」くらいである。




「吾輩は猫である」は途中で挫折してついに最後まで読めなかった。
はじめて「三四郎」を読んだ。
面白かった。
図書館で借りた、明治の文学 第21巻 
この本は旧仮名遣いですが、すべて振り仮名もうってあり、
ページ下の欄外に脚注とさし絵があるので読みやすく、
漱石の原文が楽しめるのでおすすめです。
Yの高校の数学の先生が、大の漱石ファン。Yの在学時代の保護者会で、
理系の頭脳をもってして文学を語る先生のお話はとても面白くてひきこまれました。
先生いわく、漱石の小説は、その書かれた順番に読まなければならない。
   吾輩は猫である
   坊っちゃん
   三四郎
   それから
   門
   草枕
   虞美人草 
   彼岸過迄
   行人
   こころ
   道草
   明暗
お次は「それから」ですね。

三四郎は、九州の田舎から出てきて、東大に入った新入生のお話。
この新入生のとまどいは、時代は違うけれども現代にも通じていて興味深い。
ちょうどYもこの春大学生になったばかりなので、照らしあわせて読んでしまった。
三四郎を読むと東大に行ってみたくなります。
池と木、法文科大学、博物教室、工科大学、そして図書館。
歴史的建造物の数々。
ごく限られた人にしか、ここで学問をすることはゆるされていない。
しかし、東大はたくさんの観光客や他校の学生も出入りするので、
実は、北大とならんで日本で一番入りやすい大学なんだそうです。
三四郎は、はじめ必須課目以外も出席し、週に40時間も講義を聞いていた。
ところが友達の与次郎に馬鹿だと言われ、電車に乗ることをすすめられる。
「電車に乗って、東京を一五六辺乗り回しているうちに自から物足りる様になるさ。」
そして、「是から先は図書館でなくちゃ物足りない。」と言われる。
三四郎は翌日から40時間の講義を半分に減らして、図書館に入るようになった。
三四郎が驚いたのは、
どんな本を借りても、きっと誰か一度は目を通して居るという事実を発見した時。
東京ではじめて文化のかおりに接した三四郎のとまどい。
そして友人と恋。
明治の文化人の風俗もわかり、東京散策してみたくなる本です。
今度東京に行く時は、「三四郎」を手にして行こう。
そして三四郎みたいに東京をぶらぶらしてみたい。
IMG_0929.jpg草の花  福永武彦

主人公汐見のあまりに一途で純粋で観念的な愛の世界を
理解してくれるものは誰もいない。
汐見が愛した、
美しい年下の青年藤木も離れていき、
藤木の妹、千枝子も離れて行き、
汐見は孤独な生きかたを自分に誓う。

青春の愛と苦悩。
西伊豆の美しい海と山の情景のなかで繰り広げられる青春のあまりにもせつない思い出。
ひきこまれる小説です。
汐見の愛の哲学。
読後ページをぱらぱらめくり、また読み返していました。
心理描写がとても面白い。

福永武彦の小説ははじめて読みましたが、その世界にひきこまれました。
昭和初期の情景が美しい。
青年達が物質文明に侵された現代の若者と違って、
精神世界の中で生きていた時代。
次は、「忘却の河」「死の島」も読んでみたくなりました。
そして調べたら、草の花の舞台は、静岡県戸田村でした。
いつか旅してみたい場所のリストに加わりました。
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