halのブックレビュー
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福永武彦全小説 第10巻 第11巻 新潮社
福永武彦先生の大ファンになり、3作目に読んだのは死の島。
こんなにはまった小説家は、今までになかったかも。
死の島は、草の花、忘却の河とは一線を異にする難解な長編小説です。
最初にこの本を読んでいたら、福永武彦をこんなに好きになっていなかったかも。
福永武彦の小説を理解するには、読む順番も大切です。
この本を3冊めに選んだことはラッキーでした。
死の島は、難解な小説ですが文章は読みやすく、
長編でも一気に読ませるところ、さすがは福永先生です。
現在と過去、現実と主人公相馬が書く小説と夢の世界が交互に入り乱れ、
読んでいるうちに、いったいどちらが現実でどちらが相馬の書く小説なのか
わからなくなっていくという、実験的で前衛的な小説です。
根底に流れるのは、福永武彦の永遠のテーマ、愛と生と死。
そして死の島では、今まで読んだ福永武彦の小説にはなかった
広島の原爆の被害者を描くという社会的問題を重要なテーマとしています。
原爆によって死の恐怖にとりつかれ、
もう二度と生きる意味を見い出すことができない萌木素子。
その恐怖は、どんな愛によっても救われない。
シノシマ ヒロシマ
福永武彦の小説は絶版になっているものが多く、この死の島もそのひとつです。
原爆問題が風化していく現代において、
そして福島の原発が社会的な恐怖になっている今、
この小説はもう一度多くの人々の目にふれて、読んでほしい小説だと思いました。
漫画「はだしのげん」を読んだ読後感とはまた違った意味で、原爆の恐ろしさを実感します。
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