halのブックレビュー
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海市 福永武彦
福永武彦全小説 第8巻
序のなかで、「海市」という題名は、
蘇軾の詩、「海市」から踏襲した。
「心知所見皆幻影」
(まことに知る見るところみな幻影なるを)
そして旧作の「廃市」と対になるのが面白いと思っていた。
と書かれています。
「海市」 すごくおもしろかったです。
ひきこまれました。
もう恋愛は小説の中だけにしておこうと思ってしまったほど。
こんな恋愛ができたら素敵。まるでドラマや映画を見ているような小説でした。
大人の恋愛小説です。
官能的。それでいて品があるのは、さすが福永武彦先生ならではです。
そして、「忘却の河」や「廃市」のように暗さが前面に出ていないところもまたいい。
お洒落な恋愛小説としてもさらりと読めますが、
小説の根底にはやはり、福永先生の永遠のテーマ、愛と死があります。
さまざま人間模様と、そこに流れる音楽。
薄っぺらな恋愛小説に終わらないところが、福永文学に惹かれる所以です。
40歳になる画家 澁太吉(しぶたきち)が南伊豆の旅先で
偶然出会った女性、安見子(やすみこ)と恋におちる。
彼は妻と子があり、そして彼女もまた夫がいる。
そして彼女の夫は、実は澁の親友であったという偶然。
南伊豆の左浦(さうら)、友江、落人(おちうど)の美しい情景。
東京の郊外にあるつつじのある古い寺。
そこで、江戸時代からある富士山をかたどった散策路を歩く2人。
東京からタクシーで1時間の、海の見えるホテル。
ホテルの窓から港を眺めながらの夕暮れ。
黄昏は雀色時(すずめいろどき)という。
ブラームスとモツァルトのクラリネット五重奏曲の夕べ。
上野駅から急行列車に乗って、軽井沢のホテルでの逢引。
若かったら、こんな洒落たデートをさらりとはできないだろうな。
小説の冒頭で主人公の澁が言う言葉。
40歳という若いようでもあれば老いたようでもある中途半端な年齢にいる人間は、
この人生をどういうふうに受け入れればいいのか、まだ正確な見当がついてないと言える。
諦めるには若いし、しゃにむに突進するには餘分な分別はあっても青年の血気はない。
その澁が、狂おしいほどの恋におちてしまうお話。
そして安見子がとても魅力的なのです。
今は絶版になっているのがおしいほどの小説です。
序の中で作者は南伊豆に旅行し、妻良(めら)、子浦、落居などに滞在して、
妻良の宿でせっせとノオトを取ったと書かれています。
ちょうど大作、「死の島」の執筆中に、それを棚に上げて書かれた新作です。
いつかこの海市に出てくる風景を旅してみたいです。
福永武彦全小説 第8巻
序のなかで、「海市」という題名は、
蘇軾の詩、「海市」から踏襲した。
「心知所見皆幻影」
(まことに知る見るところみな幻影なるを)
そして旧作の「廃市」と対になるのが面白いと思っていた。
と書かれています。
「海市」 すごくおもしろかったです。
ひきこまれました。
もう恋愛は小説の中だけにしておこうと思ってしまったほど。
こんな恋愛ができたら素敵。まるでドラマや映画を見ているような小説でした。
大人の恋愛小説です。
官能的。それでいて品があるのは、さすが福永武彦先生ならではです。
そして、「忘却の河」や「廃市」のように暗さが前面に出ていないところもまたいい。
お洒落な恋愛小説としてもさらりと読めますが、
小説の根底にはやはり、福永先生の永遠のテーマ、愛と死があります。
さまざま人間模様と、そこに流れる音楽。
薄っぺらな恋愛小説に終わらないところが、福永文学に惹かれる所以です。
40歳になる画家 澁太吉(しぶたきち)が南伊豆の旅先で
偶然出会った女性、安見子(やすみこ)と恋におちる。
彼は妻と子があり、そして彼女もまた夫がいる。
そして彼女の夫は、実は澁の親友であったという偶然。
南伊豆の左浦(さうら)、友江、落人(おちうど)の美しい情景。
東京の郊外にあるつつじのある古い寺。
そこで、江戸時代からある富士山をかたどった散策路を歩く2人。
東京からタクシーで1時間の、海の見えるホテル。
ホテルの窓から港を眺めながらの夕暮れ。
黄昏は雀色時(すずめいろどき)という。
ブラームスとモツァルトのクラリネット五重奏曲の夕べ。
上野駅から急行列車に乗って、軽井沢のホテルでの逢引。
若かったら、こんな洒落たデートをさらりとはできないだろうな。
小説の冒頭で主人公の澁が言う言葉。
40歳という若いようでもあれば老いたようでもある中途半端な年齢にいる人間は、
この人生をどういうふうに受け入れればいいのか、まだ正確な見当がついてないと言える。
諦めるには若いし、しゃにむに突進するには餘分な分別はあっても青年の血気はない。
その澁が、狂おしいほどの恋におちてしまうお話。
そして安見子がとても魅力的なのです。
今は絶版になっているのがおしいほどの小説です。
序の中で作者は南伊豆に旅行し、妻良(めら)、子浦、落居などに滞在して、
妻良の宿でせっせとノオトを取ったと書かれています。
ちょうど大作、「死の島」の執筆中に、それを棚に上げて書かれた新作です。
いつかこの海市に出てくる風景を旅してみたいです。
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